【SS】束の間を楽しむ者達

公開日: : 最終更新日:2014/03/01 SS

「どうしたの?」

ひょこっと、頭がのぞく。

ころころと笑顔を見せながら、彼女は微笑んで見せた。

 

『束の間を楽しむ者達』

 

暇なら遊びに行こうよ、とましろは声をかけてきた。

思わず顔が綻んで、二度三度頷く。

後ね、彼も誘おうよ、きっと楽しいよ!…と続けて出された名前を聞いて。

うげぇ、と声が漏れたことについては、隠す気もなかった。

 

「人の名前聞いて、うげぇはあんまりだと思うんだけど」

腕組みをして、少しむくれてみせる、らきじ。

ましろの腕を掴みながら、口を尖らせるゆんこ。

「あーあ、ましろちゃんと折角のお出かけだと思ったのに!

ちょっとは気を使って遠慮って物を覚えなさい、遠慮を!」

「馬鹿お前、それはこっちの台詞だから!遠慮しろお前こそ!」

間に挟まれて口論の只中にいるましろは、僅かに苦笑して頬を掻いた。

「えぇと…二人とも、仲良くしようよー」

『仲良しだから!』

「わぁ、息ピッタリ…」

思わず感嘆のため息が漏れる。

「じゃあもっとニコニコしたらいいのにー」

『それはちょっと…』

「わぁ、また息ピッタリ」

ましろ自身がニコニコと微笑みながら、二人の片手をそれぞれ握る。

嬉しそうに腕に寄り添ってくるゆんこと、ちょっと照れくさそうに腕を振るらきじ。

とりあえず口論は収まったと理解して、ましろは歩き出した。

 

「…何しに来たんだ、お前ら」

槍を肩に構えながら、呆れた様にため息を吐かれる。

僅かに呼吸が乱れてはいるが、意に介した風もなくこちらに向き合ってくる、逆毛

ましろは、両手をそれぞれ別の人間と繋いだまま、腕をぶんぶんと振る。

「だから、遊びに行こう!折角だから人が多いほうが、楽しいでしょう?」

「ものすげぇ、後ろの二人微妙な顔してるけどっ」

「またましろお前…」

逆毛と向き合って、大振りの剣を地面に預けた状態で、小柄な烈火が突っ込みを入れる。

鍛錬を積む二人の傍で、呆れた表情を浮かべて項垂れるアルバイス。

「ましろちゃん~…二人っきりはー?」

「もう俺は…色々と諦めたよ…」

未だに口を尖らせたまま不満不平を述べる一方と、諦めを顔に浮かべてされるがままの一方。

勧誘を受けたものの、にこにことした彼女以外の二方に苦笑する、二人の剣士達と一人の吟遊詩人。

…それを遠巻きに眺めて、肩を竦める男が一人。

 

「賑わっているだろう」

後ろからかけられた声に、僅かに頷く。

「元気があって良いと思います」

「なんだその感想は」

爽快な笑い声が追ってきて、つい振り返った。

「どうにも、普段は一人で動く事が多いものでして…御容赦下さいよ」

風にはためくローブを片手で押さえながら、返事を返す。

「楽しそうですしね、出かける時は付き合わせて頂きます」

「遠慮せず、今からでも混ざってくるがいいさ、杜都」

「それはちょっと…俺にではなく、はでるさんとふぉるさんに言って下さい」

そう言いつつ、少しだけ離れた場所にいる二人を指し示す。

壁にもたれて読書に勤しむ銀髪の女と、その膝に頭を乗せて身を縮めてすやすやと眠る黄金髪の女。

指を指された方向に一瞥をくれてから、相手は声を上げて笑った。

「あの二人は放っておけ、どうせ後から合流する」

「そんなことで良いのですか、キャップさん…」

「自由に気楽に、が我々の信条だ。細かいことを気にするな」

そう言いながら、杜都の胸元に拳を押し当て、口元の端を僅かに吊り上げる。

「だからお前も自由にしていろ、楽しめ」

押し当てていた拳をぱっと広げ、杜都の肩をぽんぽんと二度、軽く叩く。

「…束の間、お世話になろうと思っております」

にっこりと笑みを浮かべる。

それを見て、相手は満足げに頷いてみせた。

更に二度、肩を叩き…加えて三度目、比べ物にならない程強く叩いて来た。

思わずよろけ、抗議しようとするも…既に彼の姿はそこにはなく、前方の仲間の方へ駆けている。

わしゃわしゃと髪をかき上げ、何とも言えぬ可笑しさから、天を仰いで笑みが零れた。

空は青く、雲ひとつ無い陽気だった。

 

――to be continued…

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